導く月と花に誓う
そして、本気か、否か
わからない言葉を発す。
「千秋!お願いだ。
戻ってきてくれ」
あたしは肩で息を整えながら父親の顔を見据える。
あまりの変わりように、恐怖すら覚えてくる。
――その時だった。
「…すみませんが、
その手を今すぐ千秋さまから
離していただけないでしょうか」
あたしの背後で、それはもう低い声が響いた。
実際のところあたしは父親に肩を掴まれているため、振り返ってその姿を見ることはできない。
でも、見なくたってわかる。
その声で、なぜか安心している自分の姿があったから。
「…なんだ、お前は」
位置的に真っ正面にいる父親は、訝しげな声色で発す。
「別に、怪しい者ではありません」
それに答えた声は、どこか穏やか。
…いや、それよりなんて言おう…
あたしはまだいいとして…
十分、怪しさいっぱいだから!
この場が、人通りのない道でよかった…。