導く月と花に誓う
夜風がいい具合に熱くなった身体を冷ましてくれる。
「―――帰ろっか!」
あたしの言葉に、狐燈は微笑みながら
「はい」と答えると。
「…ぅわっ!」
あたしを横抱きにして立ち上がった。
「……なんでそうなるわけ?」
「無料タクシーでございます」
「意味わかんないんだけど…
もしかして、バカにしてる?」
「滅相もございません。
こちらの方が早く着きますよ」
…う…、どうせ歩くのも遅いですよ…
…もう、いいや。
「それじゃあ、…なるべく最短で」
「承知いたしました」
そう微笑むと、その姿は妖狐の姿へ変わり、家へと続く道を軽やかに走りだした。
―――あたしは、実質的に独りになっちゃったけど…
もう、本当の独りではない。
だって…
いろんな人が、いろんな形であたしのそばにいるんだということに、気がついたから…。