導く月と花に誓う




思い出した。




―――あの時。




『貴方は、幸せだった?』と聞いたあたしに、アナタは。






『 あなたは、幸せですか? 』



そう、言ったんだ。



本当に小さなことなんだけど…


その言葉は。


――過去でなく、現在(いま)を表す言葉だった。




まだ小さかったあたしは、その意味がわからなかったけど…。




今なら、よくわかる。


あたしはきっと、今、幸せなんだと思う。




「…ねぇ、狐燈…」


「……?」


「…ありがとう」



小さくボソッ、と言ってすぐに視線をずらした。




「…はい」


「……意味、わかってないでしょ」


「はい」





そこは冗談でも、うんって言うもんじゃ…っ



なんて、いろいろ思いながら狐燈に視線を向けると。




「冗談ですよ」


ニッコリ、と笑われた。




わざと…っ!?

こいつ、Sだ。絶っ対Sだっ


確実に面白がってる…っ





なんだか悔しくて、むぐぐ…と口を噤むと。











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