導く月と花に誓う
家具の位置が違う、とかそんなことじゃない。
この廊下に漂う空気が、取り巻く雰囲気がなんか違う。
それは、吸えば吸うほど頭がくらくらする感じ…。
…その時。
「――千秋さま!」
「……え?…ぅわっ!」
ふいに、あたしを呼ぶ声とともに、鼻から口までを手で覆われ、後ろへ引き寄せられた。
「吸ってはいけません。
これは妖気です…。
それも、かなり強力な…」
「……どういうこと…?
…まさか、それって…」
「はい…、考えたくはありませんが…
…おそらくは…」
その言葉に、あたしは自分の手で口を覆い、飛鳥の部屋を思い切り叩いた。
「……飛鳥…っ!」
しかし、反応はない。
加えるように、ガチャガチャ、とドアノブを上下に揺らすが、鍵がかかっているらしく、開かなかった。