導く月と花に誓う
ただでさえ暑くて、なにも考えたくない、っていうのに…。
「……ねぇ、なんで、
砂狗…はこんなことを?」
「…………さ」
「…え?」
「…そんなの、人間が憎いからさ!」
そう叫ぶと、犬少年、砂狗の表情はみるみる怒りに満ちていく。
その言葉に、あたしは何も言えず…
いや、言える状況じゃなかった。
「…自分たちの身勝手で俺らを捨てた人間が、憎いからだ!」
「……だ、だからって!
誰でもいいわけ!?」
「………」
あたしの言葉に、怒りに満ちていた砂狗の表情はだんだん戻り、しまいには、黙りこんだ。
そして、立ち上がると。
「俺は、人間なんか嫌いだ。
人間なんか、信じられるか!」
ギッ、と鋭い瞳をあたしに向けて、初め見た犬の姿へ再び戻ると、ダッ、と玄関まで突っ走り、一気に外へ飛び出してしまった。