導く月と花に誓う



ただでさえ暑くて、なにも考えたくない、っていうのに…。




「……ねぇ、なんで、
砂狗…はこんなことを?」



「…………さ」



「…え?」



「…そんなの、人間が憎いからさ!」




そう叫ぶと、犬少年、砂狗の表情はみるみる怒りに満ちていく。




その言葉に、あたしは何も言えず…


いや、言える状況じゃなかった。





「…自分たちの身勝手で俺らを捨てた人間が、憎いからだ!」



「……だ、だからって!
誰でもいいわけ!?」



「………」





あたしの言葉に、怒りに満ちていた砂狗の表情はだんだん戻り、しまいには、黙りこんだ。





そして、立ち上がると。





「俺は、人間なんか嫌いだ。
人間なんか、信じられるか!」




ギッ、と鋭い瞳をあたしに向けて、初め見た犬の姿へ再び戻ると、ダッ、と玄関まで突っ走り、一気に外へ飛び出してしまった。












< 89 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop