導く月と花に誓う
『人間なんて、信じられるか!』
……そんなことない。
―――そんなこと、ないから。
気づけば、あたしはそこへ向かって全力で走り出していた。
「―――…砂狗…っ!」
どうにか車が着く前に砂狗を捕まえることはできたが…
問題は、その後。
そして、あたし…絶対絶命の危機ってヤツ…?
車はもう目の前まで迫り、身動きすら出来ないあたしは瞬時に砂狗を庇うしかない。
そして、今までのことが走馬灯のように駆け巡る。
…あれ、何があったっけ…?
あぁ、そうだ…。
妖怪に大事なファーストキスを奪われたんだっけ。
…うわっ、今思い出すだけでも腹立たしいっ
腹立たしいけど、その人に惚れてしまったあたしが悪い。
…ん…、え、あれ…?
そういえば、もうそろそろきてもいいはずの衝撃が、何一つ来ない。
あるのは、時が止まったかのような静寂。
…あれれ?とそこへ視線を向けてみると、目の前ギリギリで車が停まっていた。
…な、なんで…?