導く月と花に誓う
「…お怪我はございませんか、千秋さま」
ふいに降ってきた低い声。
……あたしが好きな人の、声。
そして、その姿を見た途端の脱力感といったら、半端じゃない。
「……本気で死ぬかと思ったー…」
あー…、もう涙出そう…
「…危ない目に合わせてしまい、
申し訳ありませんでした」
そう言って、ペコリと頭を下げる。
「……ううん。ありがとう」
はぁ、と息をついて、そのままよっ、と立ち上がる。
すると、時は再び動きだし…
車も、人も、まるで何事もなかったようにそれぞれの時間を進め始めた。
「……大丈夫だった?」
ホッとしながら、あたしは抱えている犬に向かって問い掛けると。
唖然とした表情で、砂狗があたしを見ていた。
そして。
「…なんで、助けたんだよ」
………は?
助けた第一声がコレだった。