導く月と花に誓う
今度は、黒い影があたしに覆い被さってくる。
「…いきなりすみません。
この子がどうしてもこの犬がいい、
と言うもんで…」
女の子の母親の言葉に、あたしはやっと理解する。
うん…理解したんだけど、頭の中では超テンパる。
「…え、と…、あ、ど、…どうぞどうぞ!」
なんて、あたしはあっさり砂狗を女の子へ渡してしまったのだ。
砂狗からは、『…おいっ』という視線が刺さってくるが、シカトシカト。
「お姉ちゃん…!ありがとう!」
女の子は砂狗を受け取ると、満面の笑みでそう言ってあたしもつられて笑い返す。
「…本当に、よろしいんですか?」
申し訳なさそうに、母親が問いかけてくる。
「いいんですいいんです!
その代わり、大事にしてね」
「うん!する!!」
…まぁ、あの子なら大丈夫だろう。
幸せそうに帰っていく母娘を見ながら、あたしはそう思った。