螺旋迷宮
プロローグ
それは人々が既に眠りにつくであろう、深夜の部屋での出来事。
手に持つのはどこらにでも売っているような、家庭用の一般的なナイフ。
正座をしたままそれを片手に持って天へと突き上げ、暫し無言のまま見つめてみる。
無機質であろう自分の表情と、月明かりを受けて鋭く光るナイフが似合ってしまったら最高ではないかと考えた。
月明かりを受けて光るナイフを、あぁ綺麗だ、なんて頭の片隅で思うあたしはどうなのだろうと疑問を持つ。
「………」
漏れる言葉もない。
零れる表情もない。
こうなってしまったのはいつからだったっけ? なんて頭の片隅で考えて止めた。
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