螺旋迷宮
「………っ!!」
思わず驚いて、あたしはそのまま尻餅をついてしまった。
考えなかったわけじゃない。
裏扉からスタッフが出てくるなんて当たり前のことだ。
けれどグットタイミングなのかバットタイミングなのか、まさかのタイミングで裏扉が開いたものだから情けないあたしは一瞬呼吸が止まってしまった。
「黒猫…が2匹」
扉を開けるなり、黒猫とあたしを交互に見た男がボソリと呟いた。
キラッと光ったのは、漆黒のような真っ黒い長めの髪から覗く右耳の銀色で細長いピアス。
黒曜石のように黒く光る瞳が印象的な、人形みたいな顔の男の人だった。
冷たい空気を纏ったその人を、あたしは目を見開いたまま後ろに手をついて座り込んだまま固まってしまった。