螺旋迷宮
その男の人は暫し黒猫とあたしを交互に見つめると、何を思ったのか、目の前から姿を消した。
な…なんだったの…?
心臓バクバクなんてもんじゃない。
変な人に見つかったらそれこそ何をされるか分からないだろう状況に置かれているあたしは、男が消えたことによって震えきっていた息を一気に吐き出した。
「やばいとこ…来ちゃったな…」
それは風に吹かれて消えてしまいそうなほど小さな独り言だった。
ガヤガヤと人の声や音が様々なところから聞こえてくる。
あたしは逃げられない状況に泣きそうになるほど弱い人間ではないが、少なからず心は恐怖で震えていた。
男の人は消えたけれど時間の問題だと悟る。
逃げ道は…どこかないだろうか。