螺旋迷宮
特に興味が無さそうな瞳で見つめられるのは何だか少し不気味な感じがする。
どこか遠くを見ているような、それでいてあたしをじっと見ているもんだから、あたしは手を止めたまま固まるしかなかった。
見つめあったまま暫しの時間が過ぎる。
何だか急にさっきのような不安が波のように押し寄せてきて、考えたのは1つ。
この男の人が悪い人で未知の世界に連れて行かれたら、あたしはどうしたらいいのだろう…? と。
何となくこの人からは怪しい雰囲気がないから気を抜いていたけれど、ここは煌びやかな町並みの裏路地だ。
あたしなんかが絶対入れないようなお店の裏扉から出てきたこの男の人が安全だなんて保証はない。
雰囲気が〝無〟だからなのか。
それとも歳が近そうに見えるからなのか。
どんな条件から出た結果なのか分からないけれど、あたしはどこか逃げ場を確保したかのように安全地帯にいるものばかりだと思っていた。
間違っている。
間違っていた。