螺旋迷宮
とりあえず食べ終わると、あたしは再度視線を男の人にゆっくりと向けた。
男の人はさっきと全く変わることなく頬杖をついたままあたしを見ていた。
沈黙がこんなにも痛く苦しいものだと思わなかった。
苦し紛れに出てきた言葉は、
「ご…ごちそうさまでした…」
そんなありきたりな言葉だった。
何となく目を放した隙に店の中とかに引き込まれるなんてことがあったら怖いから、あたしは男の人と同じように見続ける。
何も言わない。
何も変わらない。
動かないし喋らない。
失礼な言い方になってしまうかもしれないけれど、その人からは〝人間〟の雰囲気が漂ってこない。