恋病-レンビョウ-
風になびく、茶色で綺麗な髪。
色白で背は私と同じくらいで、気が強そうな目に、ふっくらした唇。
強風が白いブラウスに凹凸をとめどなく作り、ひらひらと揺れる赤いスカート。
…ん? 待った。最後のやつ、おかしくない?
私は"彼"を呼んだはず。
「杉崎魅夜って、あんた?」
女性にしては少々ハスキーな声が、怒りを帯びて私に向けられた。
「え、あ、はい」
すぎさきみや。
正真正銘、私の名前。
あ、ちなみに高校2年生です、はい。
「話って何?」
地面を爪先でリズム良く叩き、苛立ちをあらわにしながら、彼女は私を睨んだ。
おお、こわ。
「私が呼んだのは、あなたじゃないんですけど」
敢えて彼の名前は出さないでおいた。好きだってこと、ばれたくないし。もう手遅れかもしれないけど。
「あ?知ってるし。
つか言っとくけどさぁ、ハルは来ないよ?だからウチが代わりに聞いてやるって言ってんの。」
いやいや、意味不明。
ていうか、アナタハダレ。
「あなた、なんなんですか。ていうか誰」
あ、思わず口に出しちゃったよ。
けど彼女は不快な顔をするどころか、下品な笑顔を見せてきた。それも逆に怖い。
「あー…もしかしてぇ。ウチがハルのなんなのか、知らないんだぁ?きゃはは!
ね、あんた、ハルに告ろうとしてた?」
…あぁ、なんだ。
なるほど、ね。
さすがの私も、話が大体読めてきた。その笑顔の意味も、彼女が彼のなんなのかも、分かってしまった。
私が黙っていると、彼女は一人でに喋り出した。