ボクの物語
激しい雨の夜。


傘もささずに歩いている男。


今夜は月も出ていないし
街灯もまばらなこの暗い道では
すれ違う人の顔を識別することも
困難だろう。


遠くで唸る雷光が男を一瞬映す。


歳の程は20代前半。


青年の顔は一瞬女性に見紛う程美しい。


線の細い体と
背中の半分程かかろうかという
ロングヘアーが
余計にそれを引き立てている。


涼しげな瞳はまるで色を成していないように
足元で跳ねる雨粒のみを映す。


履いているブーツはもはや役目を果たさず
一歩踏み出すたびに侵入した
雨水が音を立てた。


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