ボクの物語
ふと前方から聞こえた足音に青年は顔を上げる。


はっきりと顔は伺えないが
傘を差した大柄の男が歩いている。


男は明らかに自分の方に向かってくる。


青年が避けようとすると男に阻まれた。


男は肩が上下するほど呼吸が荒い。


同姓からも幾度か求められた
経験のある青年は
またゲイかと気味が悪くなった。


男が興奮した様子で口を開く。


「貴様だな…?美里(ミサト)の相手は…」


青年は「美里」という名で了見を理解した。


「なんの話かな?あなた誰?」


形のいい唇を吊り上げて青年は言う。


動揺を見せない為だ。


< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop