【完】甘い恋よりもそばにいて
ハッと我に返ったときには自分の家にいた。
人間、不思議なもので……あまりにも必死だったからか
ここまで来る途中のことは途切れ途切れ、おぼろげなことしか思い出せなかった。
家に帰りついて複雑な思いが込み上げてきて苦しかった。
安心感とかそういうのじゃなくて
喪失感って感じのヤツ………。
思い出したかのように襲って来た感覚は啓のぬくもりだった。
あたしの体は……啓に触れられたところひとつ、ひとつ……
全てを記憶していた。
今回のことで忘れかけていた恋心が呼び起こされたのは言うまでもない。
そしてもう一つ愛の儚さを思い知ったのだった。