【完】甘い恋よりもそばにいて


あたしとぶつかったのは男の人。


「大丈夫?」


すぐ隣にいた彼女っぽい女の人はそう言って彼に歩み寄った。




声の感じとか服装からして


あたしと同い年ぐらい。



たぶん大学生だ。



あたしは男の人に体当たりする形で勢い良くぶつかって…。



結果、2人共固い地面にしりもちをつくことになった。



「ちょっと、ちゃんと前見て歩きなさいよ!」



キツイ口調で責め立てられる。



「あ…すみませ」



「それで謝ってるつもり?笑わせないで。そっちがぶつかって来たならそれなりの謝り方ってもんがあるでしょ?」




厳しい非難は続く。



でも仕方ない、言われていることはあたってる。



ちゃんと謝りたい!


あたしがぶつかってしまった彼に本当に申し訳なく思う。





でも



こんな顔は見せられない。



仮に見せたとして



驚かれるか、困惑させるか



リアクションのパターンは決まってる。





だから


あたしは下を向いたまま謝り続けた。






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