【完】甘い恋よりもそばにいて
キスという行為が完全に終わったとき、
あたしは幸せに満ち溢れているわけではなかった。
後悔や後ろめたさはなにひとつない。
だけど
いっぺんに勢いよく押し寄せてくる
罪の意識。
あたしは知らないうちに
先輩を愛してしまった。
啓を愛しているのに━━…。
その事実が重くのしかかる。
喪失感、空虚感、恐怖。
あたしは自分の恐ろしさに
顔を引きつらせ、背筋が凍る。
先輩を愛してる、じゃない。
啓を愛してる、じゃない。
啓も先輩も愛してる。
この選択はきっと存在してはいけない。
同時に2人を愛する
それを選択したあたしはどうしようもないくらい卑劣な女。
人間性のカケラもないバケモノなのよ。
そう分かってて
冷酷で非常で腹黒いバケモノ
のあたしを受け入れる先輩は
とてつもなく寛大な心の持ち主なんだわ。