【完】甘い恋よりもそばにいて
入場ゲートの手前で先輩は立ち止まる。
あたりを見回して
小さな小さな独り言をボソっと言った。
いつもなら聞き逃すような独り言。
でも聞き逃せなかったのはどうしてだろう?
「まだ、来てねぇみたいだな」
あたしの頭ははっきり言って
そんなに出来が良くないの。
だから、
この言葉の意味に気づくことが
遅くなってしまった。
そして先輩は、
あたしにまた問いかける。
「莉華、真面目に、逃げるなら今のうち。もし逃げないなら約束して欲しいんだ。
今日1日、俺のそばを、隣を絶対離れないって」
先輩の憂いのある瞳は何かを内に秘めていた。
その重要な警告を
あたしは知るよしもなかった。
だからただ、
「わかりました…」
そう答えることしか
出来なかったんだ。