【完】甘い恋よりもそばにいて
10秒の悪戯
「ほんと、お前ってバカだよな(笑)」
なんとか、
不快な気分から
抜け出したあたしは
そんな先輩のいじわるな一言に
ムッと顔をしかめる。
でも、あたしが悪いのは
誰がどーみても明らかなわけで。
「すみませんでした…」
と素直にペコペコ頭を下げる。
先輩はそんなあたしを軽く流して
次なに乗る~?と
他のアトラクションを回りたがる。
「俺は特には…」
啓が少し歯を見せて、
微笑みながら言った。
なんだかさっきまでとは
違う違和感…。
「由奈は?」
「私はえーと、あ、観覧車!
観覧車乗りたいかも!」
珍しくハキハキと
先輩の質問に答える由奈さん。
観覧車に何か思い入れでも
あるのだろうか…。
「じゃー観覧車乗るか!」
よし、観覧車って…
あたしの希望は…?
「先輩あたし聞かれてない!」
すると、先輩は即答で
「お前はロクな意見
出さないから
聞かないほーがマシ。」
その一言に
ムッとしてしまうけど
納得する部分もあって
言い返せない…。
「うっ……」
あたしは知るよしもなかった
この由奈さんの発言が
どんな意味を示しているのかを。