【完】甘い恋よりもそばにいて
【啓side】
「莉華…」
切なさなのか哀しさなのか
よくわからない声で
彼女を呼ぶ俺。
我ながら哀れでバカだと思う。
10秒かぁ…ハハッ笑えるな
ほんと。
何がどう変わるわけでもない、
いまさら。
守りたいものを
守れるのなら
どんな犠牲でも払う覚悟で
生きてきたのにな。
なのに苦しくて仕方ない。
これが目を背けて、
逃げた続けた結果…。
ごめんな、莉華。
これ以上抑えたら、
俺きっと壊れる。
つかもうだいぶ限界超えてるし。
はぁー、
呼吸を整えて
感情の高まりを隠そうと
紛らわす。
やべぇ、なにこれ。
めっちゃドキドキしてる…。
「莉華…愛してる、
ずっと、いまもむかしも
その気持ちは1mmも変わってない」
囁くように、静かな声で。
莉華は一瞬、
瞳を大きく見開いた。
困惑してる、
信じらんないって顔。
信じてもらえなくてもいーよ。
そう思いながら
不意打ちのキスを喰らわせる。
唇と唇が
微かに触れ合って重なる
純情って感じのやつ。
ほんとはもっと求めたい。
だけど、ここで求めちゃ
俺はもう戻れない。
わかってる。
あぁこのキスの後味は最悪だ。
一方通行で報われない。
そして俺はまた、
愛する者を拒んでしまう。
そうすることで
愛する者は傷ついてしまうのに。
わかっている、
俺も同時に傷つくのだから。
俺はまた、
闇の中を
彷徨わなければならない。
光はない。
光はとうに手放したからだ。
行き先は決まっている、
最初から。
愛する者を守るために
差し出せる犠牲が
自分の命しかないのだとしたら?
そう、迷う理由などなく…
そこに選択肢は
存在していなかった
喜んで犠牲を差し出そう。
その人を心から
愛しているのだから。
ごめん、莉華。
愛してる…心から。
それだけは
覚えててほしいんだ……。