【完】甘い恋よりもそばにいて
ゴホンッ……場の雰囲気を正すかのように啓が咳払いをした。
顔が急にキリッとした真剣な表情になった。
それと同時にまわりの空気も一変し、静寂が部屋全体を包み込んでいる。
「え~じゃあ……真面目な話…すると……」
その言葉を言い終えたところで啓があたしと視線を合わせてきた……。
鼓動がさっきよりも明らかに早くなっているのを感じた、まるで早鐘のようだ……。
なぜあたしを見つめるの?って聞きたいけれど、今のあたしにそんな勇気は到底ない。
彼から視線を逸らすことすら出来ない…。
「俺は……結婚します」
なんのまいぶれもなく降ってきた言葉はまるであたしを粉々にしてしまう隕石のよう。
「結婚します」そう言った啓の言葉にはなんの迷いもない……
逆を突けば強い決意や意志があらわれているようにも聞こえた。
未だに彼はあたしの瞳を捕らえて離してはくれない。
今……あたしの瞳に映っているのはきっと漆黒の闇だろう
なにも……なにひとつ、頭の回転が回らずにおかしくなってしまいそう。
これがすべてのはじまり。
これが嵐の幕開けだった……。