利己的ヒーロー
遊者(勇者)
[炭鉱のある町/正午]

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鬱蒼と茂る森の中。

木々たちは折り重なる様に生えており、ほとんど光の入らない世界を作り出している。

そんな中にひと筋だけ、日光が差し込む場所があった。

まるで晴れた日の海中のようで、幻想的でさえある。

その自然の舞台の上に、青年らしき痩躯が見えた。

柔らかな金髪に、意志の強さをうかがわせる碧眼。

白い服をまとったその姿は、まるで天の使いのようだ。


すらり、と。


青年はゆったりと、腰の剣を抜き放った。

美しい彫刻のなされた細長い剣は、上空からの光を反射してきらめき、青年の神秘性を高める。

青年は剣を掲げ、その先にある人物を睨みつけた。


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