利己的ヒーロー
カランコロンとまぬけな音の響くバーの中。
妙な緊張感がそこを占める。
「……いやぁ、美人だったな」
「ああ、人間じゃねェみたいだった」
「色気がな――――」
ぎこちなくマーリンの余韻を語り始めた彼らの内、
「あれ?」
と1人の若者が首を傾げた。
その空気の読めないような純粋さに、ぎくり、と周りは体を揺らす。
「彼女、――――男ですよね?」
一言。
一転。
バーは阿鼻叫喚の図と化すのだった。
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