利己的ヒーロー
5人は5人とも同じ上質な服を着て、やはり揃いの綺麗な剣を携えていた。

「……勇者と見受けた。剣を抜け。正々堂々勝負せよ」
抑えた低い声で、5人衆の1人が言う。

しかし、赤毛の男は背の剣を取ろうともせず、ただじとりと睨みつけるのみ。

男たちは眉一つ動かず、まるでマニュアル通りという様に、それを受け止める。
そしてぐるりと赤毛を取り囲み、5つの切先を向けた。

「再度言おう。剣を抜け」

緊迫する空気。
それでも赤毛の男は剣に手を伸ばさない。
男たちはく、と刃を裏返す。
容赦なし、の合図。突きの予備動作。


「……仕方ない。やるか」


赤が言った時には、もう跳んでいた。

5つの刃の先には無。
瞠目した男の後ろに、赤い気配。

空中回し蹴り、とでもいうのだろうか。
高く跳んだ男は、速く落ちて。
重力と、単なる力と、遠心力が重なった蹴り。
それが男のこめかみを直撃した。

「1人」

とっさに振り向いた男の首筋に手刀一閃。

「2人」

剣を素手でいなし、みぞおちに一撃。

「3人」

そして、2人を残し、赤毛の男は完全に気配を消した。
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