利己的ヒーロー

あっという間に仲間をのされた男たちは、けれど焦りを見せることも無く。

「どこだ………?」
呟く。


ひぅ

と、2人の間に赤い風が掠めた。

「!!」
男たちは剣を走らせる。
1人は右から、1人は左から。
逃げ場は無い。
しかし。

「残念」

クロスした剣の上。
よほど軽いのか、身体の使い方を心得ているのか知らないが、男は剣に乗って、いた。

赤は目を見開いた2人を尻目に、再び跳ぶ。

そして空中で身体をひねり、2人へ同時に蹴りを入れた。


「ふぅ……」
アスファルトに全員倒れたのを確認し、赤毛の男は息を吐いた。
ぱたぱたと埃を払い、周りを見渡す。

と、男たちとは違う気配があるのに気づいた。

「誰だ?」
聞くと、拍手が聞こえ、曲がり角から老人が出てきた。
「いやいや、お見事。魔王の手の者を打ち負かすその体技、勇者様とお見受けしました」
しわがれてはいるが、柔らかく老人が言う。

赤毛の男はあくまでも沈黙を通すが、身体の緊張を解いた。

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