利己的ヒーロー
「いいか。この世は弱肉強食。そして強い者といえば猛者イコール英雄。英雄といえば勇者。だろ?」
青年は男の気迫に呑まれ、こくこくと頷く。
「そして俺は勇者サマ。ということはということはー?」
いや。
いやいやいや。
ちょっと待て。
「お前が勇者だと!! 銃を使う勇者が……黒ずくめの勇者がいるか!」
男の手を振り解き、青年は正論を叫ぶ。
「だってそうなんだもんよ。ホラ、あれだよ。構造改革、構造改革。ちょっぴり痛みを伴うよ的な?」
ぐっ、と親指を立ててそう言われると、青年は頬を上気させてなおも言い募ろうと口をあけた。が、
「いや、だって、俺が勇者だと知ってて襲ったんだろ?」
そう言われて言葉に詰まる。
数秒の沈黙の後、青年は顔を上げた。
「お前が勇者なんて誰も思わないだろう! 僕はただ、彼らの――――」
言いながら、地面に倒れ伏している魔王軍の人々を指す。
「――金品を漁っている奴を討とうと思ったんだ!」
ちゃらっ、と男の持つ袋から金属の音がした。
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