サクラノヒメゴト
俺がさくらを好きなのはもうずいぶん前から。
たぶん、あの道場に通い始めてすぐ、だ。
『ひろ~!しょうぶしよ~~!!』
あの時まで、あんなに可愛い女子がいるなんて
知らなかった。
おまけに本人は一切気づいてないし。
学校でも変なかつらに可哀想な眼鏡。
おかげで、俺は安心なんだけどな。
中1までさくらの家の道場に通っていた。
中学校は同じだったし、サッカーの方が好きだったから
剣道はやめた。
もともと親父がしてたから習い始めたんだし・・・
まぁ今となっては親父に感謝かな。
ピロピロピロ
ゴソッ
「はい、弘樹です。」
制服からケータイを取り出す。
「あー?弘樹ー!?」
「大谷せんぱいっ!?」
びっくりだ。
俺は危うく食べかけのポテトチップスを落としかけた。
「今、サッカーしてんだけど
来いよっ。」
「俺、今日疲れてるんで・・・」
もうクタクタだ。
両方の意味で。
「木内にちょっかいかけたからって怒んなって(笑)」
電話からゲラゲラした笑い声が聞こえる
「せんぱいっ!!」