君しか見えない。
ヒロセ
「っ…ねみ」
大きな欠伸を一つして、
ベッドから起き上がる。
見慣れたはずのこの部屋は、
昨日のバカ騒ぎのせいで、どうとも見慣れない部屋へと変化している。
つか、昨日いつ寝ちゃったんだ…?
そんな疑問を頭に浮かべながら、階段を降りてリビングへと向かう。
リビングから漂う香りに、
俺はつい一度足を止めて。
「あ、陽瀬。おはよう」
見慣れない景色の中にある、
唯一見慣れた風景だ。
「…なに、瑞埜。
また来たの?」
俺の家のキッチンでフライパンを片手に振り返った瑞埜が、小さく笑う。
「ほんとはハルが起きる前に作り終わって帰る予定だったんだけどね」
――君が笑ってくれる。
別にそれだけで、良かったはずなのに。
「…なに、毎日俺んとこ来て。
ミズ、お前…俺のこと、好きなの?」
カアッと赤く染まる頬に、
思わず手を伸ばしそうになる。