君しか見えない。


「っち、違うよ…!」




だけどそんなささやかな期待も、

いつものようにミズの必死な声にかき消される。


…そこまで必死に否定しなくたって。




「も、もうあたし…帰るね…!」




そして、
そのままスルリと俺の横をすり抜けて彼女は家を出て行く。


何度となく繰り返す同じ行動に、俺は最近小さな苛立ちを覚えるようになった。




リビングの中央に足を進めると、湯気を立てる温かい朝食。

炊飯器にはご飯。

コンロの上の鍋には味噌汁。



いつの間にか、ミズによってこれが用意されているのが当たり前になっていた。




「…料理上手くなったな、あいつも」




きれいに盛り付けられた朝食を見て、無意識にそうつぶやく。


初めはぐちゃぐちゃだった目玉焼きも、

つながっていたキャベツも、

酸っぱすぎた味噌汁も。




「…いただきます」




リビングの机に座り、
いつも通り朝食をとる。




もともと俺とミズは、幼なじみだった。


< 4 / 7 >

この作品をシェア

pagetop