永遠の翼
「じゃ、俺は帰るから」


「もう帰るんですか?こんなに雪が綺麗なのに」


「・・・雪の中、傘も差さずにか?」


「冗談ですよ」


「悪いが、俺はそれほどヒマじゃないんだ。風邪引かないうちに帰れよ」


そう言って背を向けようとした彼を、私は呼び止めた。


「ちょっと待ってください」


「ん?」


「私は、音羽 優子(おとわ ゆうこ)です。・・・お名前、教えてくれませんか?」


「・・・月島 宏だ」


え・・・?


―――私は、その名前を知っている。


・・・月島 宏?このひとが?


「・・・どうした?」


その言葉で我に帰る。


「いえ、何でもありません。月島さん。この傘、今度返しますからね」


「・・・ああ」


最後まで無愛想に、彼は去っていった。


なかなか面白いひとだったな―――


また、会えるといいな・・・


取り残されたなか、そんなことを思った。


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