永遠の翼
「何をしていたんですか?」


「・・・ちょっと、報告をな」


「報告?」


「・・・俺の音を、見つけることが出来たって」


「・・・見つけたんですね、月島さん。あなたの音を」


「ああ」


俺は強く、そう答えた。


「誰が眠っているんですか?そのお墓には」


新藤は微笑を崩さずに言う。


「俺に初めてピアノを教えてくれた人だよ。今はもう亡くなってるけど・・・色々なことを教えてくれた」


俺はその日々を懐かしむように空を見上げる。


「そんで、ちょっと思い出してたんだ。その人が言っていたことを」


「どんなことを言っていたんですか?そのひとは」


「『音楽は、大切な人に聴かせてやれ。大切な人のために音を奏でろ。そうすれば、自分の音は見失わない』・・・そんなことだ」


それは正しいと思う。


俺は、大切な人を想う気持ちから、自分の音を見つけることが出来た。


「そうですか・・・あなたにとって、この方は大切なひとなんですね」


新藤が墓石を見て言う。


そして、深刻に目を閉じて、こう言った。


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