永遠の翼
演奏が終わる。


幻想的な世界。


その余韻に、私は浸っていた。


間違いない。


彼女は、天才だ。


「優子」


茜の声で現実に引き戻される。


「どうしたんですか?間抜けな狸のような顔をして」


「いや・・・うん・・・茜・・・」


「はい?」


「今さらだけど、すごいね」


「まあ、休業中でもプロのピアニストですし」


「そうだったね・・・」


私は聖堂の椅子に腰掛ける。


「優子」


「なに?」


「恋をしていますかっ?」


笑顔で妙なことを訊いてくる。


「・・・どうだろ」


恋、と言う単語で宏さんの顔が浮かぶ。


彼の、不器用なところも、哀しそうな瞳も、ひねくれたところも、全部ひっくるめて。


―――私は彼に惹かれている。


きっと、恋をしている。


そう思う。


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