永遠の翼
もちろん、ピアノは続けた。



元々ピアノは好きだった。



彼のおかげで、またピアノを好きになることが出来た。



高校を卒業して、わたしはピアニストとして活動を始めた。



彼は作曲もしていた。



彼の作った曲を、わたしが弾く。



それは至福の時間だった。



「きみはもう、大丈夫だな」



「・・・何がですか?」



「きみは自分の音を見つけた。最初は無愛想だった顔も、時折微笑が浮かぶようになった」



「そうですね・・・」



自分でも、薄々そんな自覚があった。



「だから、もしきみが、自分の音を見つけられない人と出会ったら・・・今度はきみが、その人の音を見つける手助けをして欲しい」



「教師みたいなことを言う人ですね・・・」



「いや、俺教師だし」



「えっ!そうだったんですか?」



「いやいや・・・そんな今初めて知ったかのような顔するなよ・・・」



「冗談も通じないんですか?あなたは」



クスクスと笑う。



それを見て彼も笑う。



そんな日々があった。


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