永遠の翼
そして、夜中。



こっそりと病室を抜け出して、彼がやってくる。



ふたりとも、普段着だった。



わたしは黒のダッフルコートで身を包み・・・



彼はなんでもないシャツに、ベストを着ていた。



ああ・・・滑稽だ。



なんて滑稽なのだろう。



華やかさとは程遠い結婚式。



人類の歴史上でもそうそうないほど滑稽な結婚式。



でも、人類の歴史上でもそうそうないほど、幸せな結婚式。



女性なら、誰もが一度は憧れるであろう、結婚式。



それを、最高に幸せな形で迎える。



お互いの指輪を交換する。



そして、誓いの口づけ。



その唇は、とても冷たかった。



彼の命の炎は、消えかけている。



そう感じるには、十分な冷たさだった。



せめて、今夜だけは。



今夜だけでも、幸せな夫婦でいさせてください。



そう願った。



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