永遠の翼
人の気配を感じた。


見上げると、目の前に、女の人が立っていた。


黒のダッフルコートに身をまとった、美人だ。


一瞬、その背中に翼がある気がした。


まるで天使のように、神聖な存在に見えた。


その姿に見とれて、カッターナイフを落とす。


でも、目を凝らせばただ女のひとだ。


・・・今のを、見られていた?


このひとは、どうするのだろう?


『命を捨てるな』って言って、説教してくるのだろうか。


・・・そんなことしても、何も変わらない。


何も、変わらない・・・


彼女は、私の手首を一瞥する。


そして、微笑みを浮かべて尋ねてきた。


「あらあら、困った娘ですねぇ」


「・・・何がですか?」


「こんな雪の中、傘も差さずにいたら、寒いでしょうに」


「・・・え?」


想定外の言葉を受けて、思わず素っとん狂な声をあげる。


「寒くないんですか?そんな格好で」


言われて気づいた。


・・・寒い。


すごく、寒い。


「私の家に来ませんか?歓迎しますよ」


「いや、いいですよ・・・」


「まあまあ、そんなことは言わずに」


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