永遠の翼
・・・結局。


私は、その人の家に連れてこられた。


アパートの一室だった。


最低限の家具のみが置かれた、こじんまりとした部屋。


引っ越したばかりだろうか、かなり綺麗だ。


まず、お風呂に入れられた。


着替えを借りて、着ていた服は洗濯機の中だ。


今は、ちゃぶ台を境に、女性―――さっき名乗りあったとき、茜と名乗っていたひとと向かい合う形になっている。


ちゃぶ台の上には、湯気の立ったコーヒーがふたつ。


「飲んでください。インスタントですけど」


コーヒーを薦められる。


「・・・いただきます」


カップに口をつける。


黒い液体を、喉に通す。


「美味しい・・・・・・」


そして、暖かい。


そう感じた。


「・・・どうして、そんなことをしたんですか?」


右の手首を見ながら訊く。


一応、応急処置を施してある。


「・・・・・・」


その問いかけに、沈黙で答える。


「・・・何があったのか分かりませんが、これだけは覚えておいてください。人生は、幸せと言う名の宝捜しです」


微笑みとともに言う。


「・・・宝物は、ひとつだけじゃありませんよ」


「宝、捜し・・・」


私はその言葉を繰り返した。



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