永遠の翼
「フフ・・・では、その生真面目なあなたのお名前は?」


「答える義理はないな」


「あっ!ひどいっ。わたしはちゃんと名乗りましたよっ!」


新藤が責めるように言う。


「あんたが勝手に名乗っただけだろ?」


「いいじゃないですか、減るもんじゃなし♪」


「あんたみたいな怪しい奴に、名前なんか教えられるかよ」


「本当に、失礼な人ですね・・・もういいですよ。あなたの名前なんか」


ぷい、とそっぽを向いてしまう。


頭を掻きながら、俺は言った。


「・・・宏だよ。月島 宏」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


長い沈黙の後。


「・・・ひねくれもの」


咎めるように呟いた。


「ほっといてくれ」


「フフ・・・面白い人ですね、月島さんは」


「あんたほどじゃない」


(こんな奴がいたんじゃ、落ち着いてピアノを弾けそうにねぇな・・・)


(散歩でもして帰ろう・・・)


そう思い、俺は踵を返す。


「帰るんですか?」


「ああ。別にたいした用事でもなかったしな。あんたはまだここにいるのか?」


首だけを向けて答える。


「じゃあ、月島さん。ひとつ、訊いていいですか?」


「・・・なんだ?」




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