終末の法則
 勇者が大邪神殿都市を眺めていると、その視界の中心が揺らぎ、陽光煌めく草原に闇が現れた。

 闇はゆっくりと勇者に近付き、形を整えた。

 形無き闇は勇者のイメージに応えて、漆黒の仮面を付けた騎士の姿をとった。愛馬の黒炎には乗っていない。

 一人だった。

 黒騎士は、互いの間合いの外で歩みを止めた。

 それに呼応するかのように、勇者は装備を想形成した。

 淡い光が全身に纏い付き……って、ほら、早く装備をイメージして下さいよ。

「そ、そんなこと言ったって初めてなのにそんなに簡単に出来ないわよ」

 何を言っているのです。これまでの戦いで何度もやっているでしょう。

「そう言われればそんな気も。えーと、こうかな?」

 そうです。おや?レザーアーマーにショートソードですか。うーん、せめて銀甲冑《ミスリルプレート》にロングソードとかの方が良いのでは?

「うっさいわね、要は向こうの攻撃に当たんなくて、こっちの攻撃を当てれば何だっていいのよ」

 確かにその通りですが、仮面の黒騎士に対してそれはあまりにも無謀でしょう。仕方ありません。こうしましょう。

「なになに、なんか急に体が軽くなったような。それに胸当てにうっすら紋様が入ってる」
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