クリスマス・ハネムーン【ML】
初夜
……
………………
信じられない。
………
僕は、今まで。
少なくとも、愛し合ってる二人が、同じ籍に入ったその日の夜くらいは。
『初夜』とか言って、ベッドで仲良く過ごすのが普通、じゃないのか?
……と、思っていた。
それは。
別に盛大な結婚式をしなくたって。
始まりの日の夜くらいは、普通。
お互いの体温を感じあって、ラブラブに過ごしたいと思うだろうに。
……いや。
僕はハニーと添い遂げる決心をして以来、今更。
『普通』なんて状態を、これっっぽっちも期待してなかったけれども。
この状況はあんまりだ、と思う。
だって。
僕が、ハニーの籍に入って『結婚した』はずの夜。
よりにもよって、クリスマス・イヴの深夜に僕たちがいる場所は。
豪華なホテルでも、居心地の良いベッドでもなく。
太平洋上空。
夜間、オーストラリアへ向かう飛行機の中でも狭苦しい、エコノミーシートの上だったんだ。
しかも。
僕と愛しいハニーの席は、隣同士とはいえ。
力一杯、通路を挟んでいるので、こっそり手を握ることさえ、できない。
その上。
お~も~い~~!
僕の隣りで眠っている、かなり太めの白人男は。
大きな、いびきをかきかき、遠慮なく寄りかかってくるから。
夜がかなり遅いにも関わらず、僕は、ゆっくり眠る事さえ出来なかった。
えい、くそ!
もう、何度目か判らない。
見知らぬ白人が無意識にかけてくるボディ・プレスをかなり邪険に振り払い。
通路を挟んだ隣の席を見て、僕は思わずため息をついた。
………それは、もう。
ハニーの方は、幸せそうに眠っていたからだ。
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