クリスマス・ハネムーン【ML】
「解のなかなか見つからない、難しい方程式を解くのは好きだけど。
どんなに厄介な式だって、解き方さえ判れば、たいしたことないさ。
でも。
ひとの心は、もっと複雑で難解なモノだって、教えてくれたのは、君だ」
そう、ハニーは穏やかに、言った。
「現に、今だって。
螢君は泣いてる……」
「な……にを言ってるんだよ!
僕がこんなところで、泣くわけがないだろう!」
と意地を張れば。
ハニーの大きな手と腕が、ふわりと、僕の頭を抱きしめる。
その袖に、頬が当たり、薄く。
水の染みが出来たのを見て、僕は。
自分が本当に泣いていることに初めて、気がついた。
「もう、私の前では意地を張るな……螢。
君は、もう雪の王子に戻らなくて良いんだから」
「……」
「羽田空港に直通している、アクアラインが、開通したから。
別に、都心に住まなくても私の用は足りる。
君は、海の見える千葉の田舎の私の家に一緒に住んで。
爺さん婆さん相手に、看護師をやって、過ごすんだろ?」
「……」
「これから先の人生を、私と一緒に歩いてくれるなら。
君の心に、二度と雪は降らない。
積もるのは、私の『想い』だけだ」
そう真剣な顔でつぶやいて、少し照れたのか。
ハニーは、くす、と笑った。
その笑い方が、何だかとても、安心で。
僕もつられるように、小さく笑う。
「やっと、笑ったな。
螢」
ハニーは今度は、もっと、はっきり笑うと、その大きな手で、僕の頬を包んだ。
「オーストラリアは、今は夏だ。
サンタもきっと海パン一丁でサーフィンしてる。
私たちも、どこまでも続く珊瑚礁のグレート・バリアリーフで二人。
熱帯魚を追いかけて、スキューバ・ダイビングをしよう」
どんなに厄介な式だって、解き方さえ判れば、たいしたことないさ。
でも。
ひとの心は、もっと複雑で難解なモノだって、教えてくれたのは、君だ」
そう、ハニーは穏やかに、言った。
「現に、今だって。
螢君は泣いてる……」
「な……にを言ってるんだよ!
僕がこんなところで、泣くわけがないだろう!」
と意地を張れば。
ハニーの大きな手と腕が、ふわりと、僕の頭を抱きしめる。
その袖に、頬が当たり、薄く。
水の染みが出来たのを見て、僕は。
自分が本当に泣いていることに初めて、気がついた。
「もう、私の前では意地を張るな……螢。
君は、もう雪の王子に戻らなくて良いんだから」
「……」
「羽田空港に直通している、アクアラインが、開通したから。
別に、都心に住まなくても私の用は足りる。
君は、海の見える千葉の田舎の私の家に一緒に住んで。
爺さん婆さん相手に、看護師をやって、過ごすんだろ?」
「……」
「これから先の人生を、私と一緒に歩いてくれるなら。
君の心に、二度と雪は降らない。
積もるのは、私の『想い』だけだ」
そう真剣な顔でつぶやいて、少し照れたのか。
ハニーは、くす、と笑った。
その笑い方が、何だかとても、安心で。
僕もつられるように、小さく笑う。
「やっと、笑ったな。
螢」
ハニーは今度は、もっと、はっきり笑うと、その大きな手で、僕の頬を包んだ。
「オーストラリアは、今は夏だ。
サンタもきっと海パン一丁でサーフィンしてる。
私たちも、どこまでも続く珊瑚礁のグレート・バリアリーフで二人。
熱帯魚を追いかけて、スキューバ・ダイビングをしよう」