クリスマス・ハネムーン【ML】
「く……そ……っ!」
絞り出すように声を吐きだす僕の口には、酒と。
鉄錆の味のする血と。
もっと生臭く、淫らな臭いがするものを無理に呑み込まされて、吐きそうになっていた。
やっぱり、ここは観光地らしい。
船舶用の外観に似合わない、ツインのホテルみたいな小奇麗な部屋だった。
その。
血と汗と体液で汚れ、シーツの乱れたきったベッドの上に。
両手を前で組み、祈るような形に縛られたまま。
僕はシーツよりも、もっと汚れた全裸で放置されていた。
そして、隣のベッドには。
ハニーが。
僕の愛しいハニーが。
シャツとズボンを少しも乱されることなく、ベッドの上で静かに眠っていた。
さっきまで。
僕が散々あげた叫び声と、喘ぎ声の狂宴が間近で行われたのにもかかわらず。
一度も目が覚めなかったコトを鑑みるに、ハニーは相当深い眠りについているようだった。
そして、それは。
ハニーに残された時間が、もう、わずかしかないコトの証拠でも、あった……のに。
そんなハニーの、近くに少しでも寄ろうと、身を起こし。
縛られた手で、いざろうと努力しても、自分のカラダは重く。
ちっとも僕のいうコトを聞いてくれなかった。
「……う。
さ……と……う
ハニーに……くすりを……」
一刻も早く飲まさないと……死んでしまう!
どこを縛られているわけでも、ないくせに。
岩井が僕にした一部始終を、間近で見させられ、腰が抜けたらしく。
呆然として動けないでいる佐藤に、僕はしわがれた声で呼びかける。
「ぼく……は……も……
うごけない……から……
……あんた……が……はやく……」