クリスマス・ハネムーン【ML】
追いかけて来たモノ
あっっつ!
日本を出た時には、確かに冬だったのに。
オーストラリアは、真夏だった。
……って言うか。
暖房が利いていた飛行機内と。
冷房の利いている、空港内の温度が一緒で。
国際空港から一歩も出て無いシドニーは、さほど実感が湧かなかったけれど。
乗り換えた小さな国内機で、グレート・バリアリーフの玄関口であるケアンズに降りたとたん。
真夏の実感が押し寄せて来た。
ぶぁっと、むせかえるような暑さに。
上着と長袖を脱ぎ捨てて、Tシャツ一枚になりながら。
思ったより湿気が無いこと。
こんな暑い日の日本では、必ず聞こえるはずの蝉の声が聞こえない所が。
『外国』に来たんだ、って実感になった。
しかも。
「でけー、ツリーだなぁ」
僕らを迎えてくれたクリスマスツリーの大きさに目を見張る。
どうやら、天然の木を切らないまま、そのまま飾り付けをしているみたいだ。
ケアンズ空港は実はそんなに大きくない。
飛行機から直接空港に入る通路さえなく。
空港施設までは、一度飛行機のタラップを降り。
滑走路の横を飛行機に乗ってた客達がぞろぞろ歩いて中に入るんだけど。
そんな空港には不釣り合いなほど大きなクリスマスツリーが、空港の脇にでんっと居座っていたんだ。
その大きさに、思わず呻けば。
ジャケットを脱ぎながら、ハニーが笑う。
「この国も、キリスト教の圏内だから。
クリスマスは、日本よりちゃんと祝うんだ」
「ふ~~ん」
そんなもんかな、と見渡せば。
こんなに暑くても、クリスマスは、クリスマスらしい。
飛行機から降り、空港施設に入ると。
そこかしこに、クリスマスの飾り付けがしてあるのが、なんだか、ちぐはぐでおもしろい。