クリスマス・ハネムーン【ML】
 天気は、快晴。

 抜けるような青空も、気持ちよく。

 空港の中まで風が入り込み、ざわざわと。

 ツリーを揺らし、潮の香りを運んで、僕を誘う。

「本当に、サンタもサーフィンしてるかもしれないぜ?」

 大好きな真夏の海の気配に、わくわくと。

 ハニーの手を引っ張らん勢いで、早く浜に出ようと、誘ったときだった。

 大勢の観光客と、待ち合わせらしいツアーガイド達でごった返している、空港の出口で。

 僕たちは、声をかけられた。

「霧谷さん~~
 博士~~!」

 霧谷!

 ハニーの客か。

 僕も一応『霧谷』になったことは、なったけれども。

 戸籍の手続きをして、そのまま、飛行機に乗ってしまった以上。

 そんなこと知っているのは、僕たち自身の他になく。

 何より『博士』なんて、呼ばれる辺り。

 どう考えてもハニーの仕事に関係してる誰かに違いない。

 それにしても、なんで日本を飛び出た先で、呼ばれんだろう?

 ちらり、とハニーを見れば。

 彼も珍しく眉間にしわを寄せて、怪訝な顔をしている。

 どうやら、ハニー自身も想定外のコト、みたいだった。

「こっち、こっち、こっちですよ~~!」

 更に大きくなる声の方を見れば。

 リゾート地にも関わらず。

 明るいスーツをきっちり着込んだ日本人の男が、ハニーに向かって歩いて来る。

 見た目、年は、僕より二、三才上みたいで。

 背は、僕よりも低く。顔も整っている、っていうよりは、大きな眼が印象的で『面白い』。

 手をぶんぶん振り回している所が、コミカルだ。

 なんだか、アニメか、漫画のキャラみたいにも見える。

 その姿を見て、ハニーは、頭痛をこらえるように、アタマを抱えて、つぶやいた。




「……佐藤(さとう)君」
 


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