クリスマス・ハネムーン【ML】
 僕の手首は。

 岩井に縛られ、暴れたために。

 かなり酷く肌が擦りむけた場所だった。

 もちろん、手当てはしていたけれども。

 海水が染みて重くなった包帯を圧迫されると、涙が出るほど痛んだ。

 そんな僕を見てハニーは、小さく息を呑むと、慌て手首を離し。

 すぐにもっと近づいて、来たかと思うと。

 僕の全部を、自分の大きな身体で、すっぽりとつつむように、抱きしめた。

 そして、そのまま。

 ハニーは、僕の唇を自分の唇で探して、顔を寄せた。

「な……に、すっ……!
 人が見てるじゃないか……!」

「構わない」

 腕の中でじたばたして、僕を逃がさないように。

 ハニーは、僕を改めて強く抱きしめた。

「ダメだっ……て!
 僕は汚れてるのに!
 これ以上関わったら、ハニーの方が汚れるぞ!」

「海に、洋服のまま飛び込んだから?
 それこそ構わないぞ。
 このまま、二人で帰って、一緒にシャワーを浴びよう」

「莫迦……っ!
 そんな意味じゃな……!」


 違うっ……て!


 なんて。

 僕の言葉は、ハニーの吐息に奪われ、声にならなかった。

 本当は、あまり、上手く無い。

 けれども、深い愛情の感じられる、ハニーの甘い口づけに。

 自分の置かれている場所も。

 張っている意地も。



 ……全部忘れた。



 それよりも。

 とても慣れた暖かいぬくもりに。

 昨日。

 ハニーが、連れさらわれてから、ずっと張っていた気が抜けて。

 ハニーに抱きしめられたまま、ガクッと膝が砕ける。

「……螢」

 ハニーは、長い口付けを終えると。

 僕の首筋に顔をうずめるようにささやいた。



「私だって、そんなに綺麗な人間じゃない」

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