クリスマス・ハネムーン【ML】

結婚式

 
 ……僕の胸が、苦しいのは。


 さっき、大笑いしたからだ。






「おお~~
 すげー~~!」



 僕の目の前に、どさっと置かれた山盛りの果物に、僕は歓声をあげた。

 大きなボールに盛られたのは、数々の南国のフルーツだ。

 パイナップルや、メロン。

 マンゴーや、パパイヤなんて、見慣れた果物から、何だか良く判らない珍しい果物が。

 小さいものは、そのまま。

 大きなヤツは、食べやすい大きさに切られて盛られている。

 どれも、日本で見るヤツよりも水分を含んでキラキラしてて。

 一面の真っ白な部屋に、それだけが。

 現実味をおびた、宝石みたいに輝いて見えた。

「近所のフルーツ農園から、手に入れて来た。
 新鮮さは、保証する。
 螢君の好きな、果物ばかりのはずだから。
 昨日は、ほとんど食事が摂れなくても。
 これなら、大丈夫だろう?」

「うん!」

 僕の歓声に、自分の方が、嬉しそうな顔をして。

 ハニーは、どれから食べようか?

 なんて、笑った。



 ……岩井の手から逃れて、一日は、じっとしていたものの。

 次の日は、傷がふさがらないのに、まだ暗い早朝から動けなくなるほど、歩きまわり。

 服を着たまま、溺れかけるほど、海水浴をした挙げ句。

 濡れた服を乾かしもせず、ずーっと、立ち話をした結果。

 僕は、当然のように、調子を崩し。

 もう少しだけ、病院に世話になることが、決定してしまった。

 結局、半日スキューバをしただけで。

 このまま、大したこともせずに。

 日本に帰ることになりそうな気配に。

 とっとと、全回復したハニーがせめて。

 僕と一緒に美味いモノを食おうと、現地栽培の果物を持って来たんだ。

 
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