クリスマス・ハネムーン【ML】
「うわ……
 オーストラリアでは、真夏に、苺が取れるんだ~~!」

 日本での苺の栽培期間は、冬のビニール栽培から始まり。

 路地栽培は五月頃までなので、真夏のここでは、取れることは無いはずだ。

 だからまさか、そんなはずはないと首を傾げる僕に、ハニーが微笑んだ。

「それは、ライチだ」

「ライチ!
 ライチって、良く中華料理の後に出て来るヤツ?
 でも、あれって暗赤色の固い皮に包まれてて、中を食うヤツだろ?
 こんな、苺と間違うくらい、鮮やかな色じゃない」

「……それは、君が今まで、冷凍したヤツしか見たことなかったからだろ?
 本当の色は、これだ」

「ふ~~ん」

 さすが、現地栽培!

 僕が、今まで知っているようで、全く知らなかった果物に、興味を持てば。

 ハニーが片目を瞑った。

「これが気に入ったのなら。
 私が皮を剥いて、食べさせてやろう。
 螢君は、手を怪我してるから。
 下手に使うと痛むだろ?」


 ……へ?


 僕の手……って。

 怪我をした……って言うか、擦りむいたのは、手首だけ……なんだけど?

 岩井は、僕の指を折るよりも、楽しいことに夢中だったから。

 指に関しては、ささくれ一つ、新しい傷は出来てない。

 だから。

 自分でやるから、いいよ、と断ろうとすれば。

 ふっ……と。

 突然、どこからか、現れた佐藤が、笑いながら言った。

「霧谷さんは、ただ。
 螢さんの世話を焼きたいだけ、なんですよ?
 させておけば、良いんです」

「そー そー
 ついでに、さぁ。
 ライチを食べ終わったら、種を口移しでとってもらえばいいんだよ。
 そうすれば、お師匠さまは、手を全く使わなくてすむし。
 Mr.霧谷とラブラブ出来るし」
 
 そう。

 佐藤と同じように、どこからか来た、ジョナサンが笑って、僕達をからかった。
 
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