クリスマス・ハネムーン【ML】
 
「……っ!」



 あまりの息苦しさに。

 薄目を開けて、辺りを見れば。

 まず、目を瞑り。

 とても切なげな表情(かお)で僕の唇を追うハニーが見えて。

 その肩越しには……

 ここに居るべきはずの佐藤とジョナサンの姿がなかった。



 ……気を利かしてそっと、出ていったのか……?


 と。

 もう一度、目を閉じかけて、僕は、見開いた。


 ……そもそも、佐藤とジョナサンは、いつ、どこから僕のベッドサイドに来たんだっけ?



 一面の真っ白な部屋には、良く見れば、窓も、扉も無い。

 ベッドがあって、僕が寝てて。

 サイドテーブルには、山盛りの果物があって。

 僕は、てっきり。

 病院の十階にある自分の病室だと思ってだけれど……

 ……違う。

 気がつけば。

 ハニーのキスで口に含んだ。

 中に大きな種があるはずのライチが。

 かすかな、甘味だけを残して、淡雪をたべた時のように、跡形も無く消えていた。



 これは……?



 これは、なんだ?



 僕は、夢を見ているんだろうか?



 世界の違和感を見つければ、急に辺りは、ふわふわとして現実感が無くなり。



 ただ、胸が、苦しかった。



 息が、しにくかった。



「ハ……ニー……っ」


 まるで、陸上に上がって、呼吸が出来なくなった魚のように。

 酸素を求めて喘ぎ。

 キスを止めた僕に、ハニーは、そっと微笑んだ。


「そろそろ効いてきたみたいだな。
 螢。
 ……苦しいか?」

「……な……っ!
 この胸が……息が……詰まる……のは。
 ハニーが……?
 一体、あんたは、何を……!」

 息も絶え絶えの質問に、ハニーは笑って僕を見た。

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