クリスマス・ハネムーン【ML】
 
 ハニーは、怖いな……



 する気になれば、街の全てを死に追いやれる力も。

 僕に対する、一途で、妥協を許さないほどの強い想いも。



 ……けれども、僕は、そのハニーが愛しかった。

 だって『恐怖』の原因は。

 ハニーの文字通り、命を賭けた僕への愛だから……

 決して軽いものじゃない。

 重く、苦しいほどに熱い愛は。

 どう考えても、現在の流行(はやり)とは、かけ離れているけれど。

 僕は、きちんと受け止めたかった。

 やっぱり僕も。

 ハニーの事を、心から愛してるから。

 僕は、僕の出来る限りの『ハニー』を。

 愛や、恐怖といった、精神的なモノも。

 カラダを重ねれば、放たれるものでさえ。

 全てを受け入れたかった。





 ……僕にその資格さえ、あれば。

 僕が、ハニーの隣に居て良いのならば……





「……螢……螢?」

 ハニーも、いつもと違う体勢で眠ってて、夢をみたらしい。

 腕の中に僕が居ないのに気がついて。

 寝ぼけ眼で、慌てたようにベッドの上を探り……

 ガバッと、身を起こした先に、僕の姿を見つけて、ほっとため息をついた。

「……そんな所に、居たんだな……」

 なんて。

 妙にしみじみと言うハニーが、可笑しくて。

 僕は、ちょっと笑った。

「僕は、どこにも行かないよ。
 夢見が悪くて、水が欲しくなっただけだ」

「私にも、くれ。
 ……螢の口移しで」

「莫……迦!
 何、寝ぼけてんだよ!
 水ぐらい、自分で飲め……って。
 仕方ないなぁ……」

 僕に自分で飲めと言われて、なんとなく。

 ハニーのシュンとした顔が、耳の垂れた、子犬みたいに見えた。
 
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